【ビタミンの種類と効果】
2024/10/23

【ビタミンの種類と効果】

ビタミンは、体の正常な機能を維持するために必要な有機化合物で、さまざまな種類があります。それぞれ異なる役割を果たし、特定の欠乏症や健康効果に関わっています。以下は、代表的なビタミンとその効果です。

1 ビタミンA

ビタミンAとは、レチノール、レチナール、レチノイン酸の総称で、脂溶性ビタミンに分類されます。

 また、植物に含まれるβ(ベータ)-カロテンは、摂取すると、小腸上皮細胞でビタミンAに変換されるのでプロビタミンA(ビタミンA前駆体)と呼ばれ、ビタミンAの仲間に分類されます。

ビタミンAの働き

ビタミンAの主要な成分であるレチノールには、目や皮膚の粘膜を健康に保ったり、抵抗力を強めたりする働きがあります。また、レチノールは、視細胞での光刺激反応に関与するロドプシンという物資の合成に必要なため、薄暗いところで視力を保つ働きもあります。最近ではレチノールが上皮細胞で発癌物質の効果を軽減するといわれています。

 一方、プロビタミンAであるカロテンにはβ(ベータ)型の他にα(アルファ)型、γ(ガンマ)型、クリプトキサンチンなどがありますが、ビタミンAの効果が最も高いのはβ-カロテンです。とはいっても、β-カロテンもすべてがビタミンAに変換されるわけではなく、吸収効率やビタミンAへの変換率を考慮すると、β-カロテンはレチノールの6分の1の効力に相当すると見積もられます。

ビタミンAが不足してしまうと

ビタミンAが不足すると暗順応障害が起こり薄暗いところでものが見にくくなり、やがて夜盲症になります。また、角膜や結膜上皮が乾燥し、角質化するほか、皮膚や粘膜でも、乾燥、肥厚、角質化が起こります。小児の場合は成長が停止する場合もあります。

 反対に脂溶性ビタミンである、ビタミンAは過剰に摂取しても、健康障害が起こることが知られています。ビタミンA過剰症の症状として、頭痛が特徴的であるほか、急性の過剰症としては脳脊髄液圧の上昇や、慢性的な過剰症として、頭蓋内圧亢進症や皮膚のはげ落ち、口唇炎、脱毛症、食欲不振、筋肉痛などの症状が見られることが知られています。

 ビタミンAの過剰症は通常の食事ではほとんど起こりませんが、サプリメントを利用したり、ビタミンAを特に多く含むレバーを過剰に食べたりする際は注意しましょう。また、β-カロテンからのビタミンAへの変換は必要に応じて厳密に調節されているため、β-カロテンによるビタミンAの過剰症は起こらないとされています。

2 ビタミンB群(ビタミンB群は8種類あり、体内のエネルギー代謝に重要です。)

ビタミンB1

水溶性ビタミンの仲間であるビタミンB1はビタミンの中で最初に発見されたものです。科学的にはチアミンという名称の化合物で、ブドウ糖をエネルギーに変換する際に必要な栄養素です。また、ビタミンB1には、チアミンにリン酸が一つ結合したチアミンモノリン酸(TMP)、二つ結合したチアミンジリン酸(TDP)、三つ結合したチアミントリリン酸(TTP)がありますが、それらの化合物は消化管でビタミンB1に消化された後、吸収されるため、ビタミンB1と同等の活性を持ちます。

ビタミンB1の働き

生細胞中では、ビタミンB1は主にチアミンにリン酸が二つ結合したTDPの形で、酵素タンパク質に結合して存在しています。食品が調理されたり消化されたりする際に酵素タンパク質が変性すると、酵素たんぱく質に結合していたTDPが遊離し、消化管内でフォスファターゼという酵素の働きによりリン酸が取れて、チアミンとなって、空腸と回腸で吸収されます。食品によっても異なりますが、食事中のビタミンB1の利用効率は約60%程度と推定されています。

 ブドウ糖がピルビン酸になるまでを解糖系といい、酸素を使わずにエネルギーを少し産生します。ピルビン酸はさらにアセチルCoA(コエンザイムA)になり、TCAサイクル(クエン酸回路)に入って酸素を消費して代謝されます。最終的には二酸化炭素と水になり、たくさんのエネルギーを産生します。ビタミンB1はピルビン酸からアセチルCoAに変わる際に必要な水溶性ビタミンです。

ビタミンB1が不足してしまうと

ビタミンB1が不足すると、ブドウ糖から十分にエネルギーを産生できなくなり、食欲不振、疲労、だるさなどの症状が現れます。また、脳はブドウ糖をエネルギー源としているため、ビタミンB1が不足するとエネルギーが不足し、脳や神経に障害を起こします。さらに、重症な場合は脚気(足の浮腫、しびれ、動悸・息切れ)やウェルニッケ・コルサコフ症候群(中枢神経が侵される障害)になり、重篤な場合は死亡することもあります。

 玄米が重要なビタミンB1の摂取源だった日本では、ぬかを取り除いた精白米を食べるようになった元禄時代以降、脚気にかかる人が多くなり、江戸患い(わずらい)とも呼ばれていました。現代でも、インスタント食品などの利用の増加により、ビタミンB1が不足し、脚気にかかる人もいます。

ビタミンB2

水溶性ビタミンのビタミンB2は、リボフラビンという化合物です。ビタミンB2は、リボフラビンにリン酸が一つ結合したフラビンモノヌクレオチド(FMN)、またはFMNにAMPが結合したフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)の形があります。これらは、どちらも消化管でビタミンB2にまで消化された後、体内に取り込まれるため、ビタミンB2の同等の生理活性を示します。

 リボフラビンは黄色い色素で、着色料として食品添加物に使われることもあります。牛乳からたんぱく質と脂肪を取り除いた上澄みは黄色みをおびていますが、これはこのビタミンの色からきています。

ビタミンB2の働き

生細胞中のリボフラビンは、ほとんどがFADあるいはFMNとして酵素タンパク質と結合した状態で存在しています。食品の調理や消化の際に、結合している酵素タンパク質が変性してFADまたはFMNが遊離します。遊離したFADまたはFMNは大部分が小腸粘膜で加水分解されてリボフラビンとなり、小腸上皮細胞から吸収されます。食品により変換効率や吸収効率が異なりますが、平均的な食事中のビタミンB2の利用効率は約64%と推定されます。

 吸収されたリボフラビンは生体内で再びFMNやFADに変換されて、糖質、たんぱく質、脂質の代謝、エネルギー産生に関与する酸化還元酵素の補酵素として働きます。「発育のビタミン」ともいわれ、発育促進に重要な役割を果たすほか、皮膚、髪、爪などの細胞の再生にも関与しています。

ビタミンB2が不足してしまうと

牛乳・乳製品、動物性食品、豆類の摂取量が少ない場合、ビタミンB2が不足することがあります。ビタミンB2は皮膚や粘膜の機能を正常に保つことに関係していますので、不足すると口内炎、口角炎、舌炎、脂漏性皮膚炎、角膜炎などを起こします。

 また、成長期の子どもの場合は、ビタミンB2が不足すると成長障害を起こします。エネルギー消費量が多い人ほどビタミンB2を必要とするので、活動量の多い子どもの場合、不足しないように注意する必要があります。

ビタミンB3

水溶性ビタミンB群の一つで、ニコチン酸とニコチンアミドの総称です。さらに、アミノ酸の一つであるトリプトファンから、体内で、ナイアシンが合成されるため、トリプトファン含有量も考慮してナイアシン当量で表します。トリプトファン60mgがナイアシン1mgに相当するので、ナイアシン当量(mgNE)は、以下の式で表します。

ナイアシン当量(mgNE)=ナイアシン(mg)+1/60 トリプトファン(mg)

ビタミンB3の働き

生鮮食品中では、ナイアシンは、主にピリジンヌクレオチド(NAD、NADP)の形で存在しますが、食品を調理・加工する際に分解され、動物性食品ではニコチンアミド、植物性食品ではニコチン酸になります。生野菜や刺身など生の細胞を食べる食品の場合は、ピリジンヌクレオチドは消化管内で分解されてニコチンアミドになります。ニコチンアミドやニコチン酸は小腸から吸収されます。食品により分解率や吸収率が異なりますが、日本で一般的に食べられている食事中のナイアシンの利用効率は約60%と推定されています。

 ニコチン酸やニコチンアミドは、体内でピリジンヌクレオチドに生合成された後、脱水素酵素の補酵素として糖質、脂質、タンパク質の代謝、エネルギー産生に関与しています。また、補酵素として、脂肪酸やステロイドホルモンの生合成、ATP産生、DNAの修復や合成、細胞分化など、幅広い反応に関与しています。

ビタミンB3が不足してしまうと

ナイアシンが欠乏するとペラグラ(pellagra)という病気になることが知られています。18世紀にスペイン人医師によって医学書に初めてこの病気が紹介されました。

 ペラグラのおもな症状には、赤い発疹ができる皮膚症状、口舌炎や下痢などの消化管症状、神経障害の三つがあげられます。

ビタミンB5

ビタミンのひとつです。もともと酵母の成長を促進する物質として発見されました。その後、この物質の欠乏によりラットの成長が阻害されたり、ニワトリで皮膚炎が起こったりすることが明らかになり、ビタミンとして認識されるようになりました。パントテン酸は、「至るところに存在する酸」という意味で命名されました。この名前の通り様々な食品に含まれているので、通常の食事をしている人では不足することはまずありません。

ビタミンB5の働き

パントテン酸は、コエンザイムA(補酵素A)、アシルCoA、アシルキャリアタンパク質(ACP)、4́-ホスホパンテテインの形で、細胞内に存在しており、食品として摂取されると、消化管でパントテン酸にまで消化されたのち、体内に吸収されます。

 パントテン酸は体内で活性化され、エネルギー産生の時に重要な役割を果たしている補酵素AやACPの成分となっています。補酵素AはアセチルCoAとして、クエン酸回路や脂肪酸のβ酸化などの代謝系において、脂質や糖質の代謝で重要な役割を果たすほか、からだの中で起こるきわめて多くの酵素反応に関与しています。

 また、善玉コレステロールを増やしたり、ホルモンや抗体の産生などにも関与しています。

ビタミンB5が不足してしまうと

パントテン酸が欠乏すると細胞内の補酵素Aの濃度が低下するため、欠乏の初期症状としては疲れやすくなったり、食欲がなくなったり、便秘になったりといった症状が見られます。さらにめまい、頭痛、動悸、不眠などが起こり、進行すると知覚の異常、激痛(焼けるような痛み)、麻痺や副腎皮質や消化管などの臓器の機能不全、成長停止が起こります。

 しかし、パントテン酸は幅広い食品中に含まれているため、通常の食事では、欠乏症はきわめて少ないと考えられています。

 過剰症については、パントテン酸単独での過剰症の報告例はありません。2週間のあいだ、過剰のパントテン酸(遊離のパントテン酸として3,664mg)を摂取した研究でも、健康への悪影響は認められませんでした。しかし、3か月間他の薬品と一緒にパントテン酸カルシウムを大量に投与した実験では、吐き気、食欲不振、腹部の痛みを訴えた被験者がいること、動物実験においてもパントテン酸の過剰投与により、成長障害、下痢、脱毛などの健康障害が起こったことなどが報告されています。通常の食事では上昇の心配はありませんが、サプリメントなどの利用には注意が必要です。

ビタミンB6

ビタミンB6活性をもつ化合物にはピリドキサール、ピリドキシン、ピリドキサミンの3つがあります。また、これらの化合物にリン酸が結合したピリドキシン5́-リン酸(PNP)、ピリドキサール5́-リン酸(PLP)、ピリドキサミン5́-リン酸(PMP)は、消化管でビタミンB6にまで消化された後、体内に取り込まれるため、ビタミンB6と同等の働きを持ちます。ビタミンB6は白色の結晶で光によって分解されやすい性質をもっています。

ビタミンB6の働き

ビタミンB6は生鮮食品中では、通常、リン酸やたんぱく質と結合した状態で存在していますが、調理や消化の過程で分解され、最終的にはピリドキサール、ピリドキサミン、ピリドキシンとなって吸収されます。

 ビタミンB6は、補酵素(酵素の働きを助ける成分)として多くのアミノ酸の代謝を助けています。免疫機能の正常な働きの維持、皮膚の抵抗力の増進、赤血球のヘモグロビンの合成、神経伝達物質の合成などの生理作用もあり、脂質の代謝にも関与しています。

ビタミンB6が不足してしまうと

ビタミンB6が不足すると、皮膚炎、舌炎、口内炎、口角症、貧血、リンパ球減少症になります。また、成人の場合は、うつ状態、錯乱、脳波異常、痙攣発作など神経系に異常が起こることもあります。とくに抗生物質を長期間投与された患者などでは欠乏症になる恐れが指摘されており、注意が必要です。一方、大量に摂取した場合は、感覚性ニューロパシー(感覚神経障害)が起こりますが、通常の食事からの摂取ではまず過剰症の心配はいらないでしょう。

ビタミンB7

ビタミンB群に属する水溶性のビタミンで、オランダの研究者ケーグルが、酵母の増殖に必要な因子として発見され、ビオチンと名づけられました。また、その後、マウスによる研究により、皮膚の炎症を防止する因子であることが発見され、ビタミンHと名づけられました。現在は、最初に発見されたときのビオチンという名前が一般的です。水やアルコールに溶けやすく、熱、光、酸に対しては安定ですが、アルカリに対しては不安定です。

ビタミンB7の働き

ビオチンは、生体内では、ほとんどがたんぱく質と結合した状態で存在します。消化の過程でたんぱく質が分解すると、ビオチンが遊離し、主に空腸から吸収されます。

 体内では、ビオチンは糖代謝に関与するピルビン酸カルボキシラーゼ、脂肪酸代謝に関与するアセチルCoAカルボキシラーゼやプロピオニルCoAカルボキシラーゼ、アミノ酸の代謝に関与する3-メチルクロトノイルCoAカルボキシラーゼの補酵素として、エネルギーをつくりだす手助けをしています。また、皮膚や粘膜の維持、爪や髪の健康に深く関わっているビタミンで、不足するとアトピー性皮膚炎や脱毛などの皮膚症状や食欲不振、うつなどの症状が現れます。

ビタミンB7が不足してしまうと

ビオチンは、糖の代謝に必要なピルビン酸カルボキシラーゼの補酵素です。ピルビン酸カルボキシラーゼは、ピルビン酸から、肝臓や腎臓での糖新生に必須のオキサロ酢酸を作り出す酵素です。そのため、ビオチンが欠乏しオキサロ酢酸が十分に作られないと、糖代謝が正常に行われず、乳酸が蓄積して血液が酸性になる乳酸アシドーシスになります。

 また、ビオチンが不足すると、リウマチ、シェーグレン症候群、クローン病などの免疫不全症のほか、インスリンの分泌能が低下し1型および2型の糖尿病のリスクが高まることが知られています。そのほか、乾いた鱗状の皮膚炎、萎縮性舌炎、食欲不振、むかつき、吐き気、憂鬱感、顔面蒼白、性感異常、前胸部の痛みなど、さまざまな症状が現れます。

 ビオチンはいろいろな食品に含まれているうえに、腸内細菌によっても合成されるので、通常の食生活では欠乏することはないと考えられます。しかし、遺伝的に体内でビオチンを再生して再利用するための酵素や、ビオチンを活性化するための酵素が欠損している場合は、欠乏症状が現れます。

ビタミンB9

水溶性ビタミンでビタミンB群に属します。植物の葉に多く含まれ、黄色結晶で光や熱に不安定な物質です。ビタミンB12とともに赤血球を作るので「造血のビタミン」といわれています。

ビタミンB9の働き

食品中では、葉酸はほとんどがポリグルタミン酸型として存在しています。調理や消化の過程で、モノグルタミン酸型に変換されて小腸から吸収されます。細胞内では、再びポリグルタミン酸型となり、補酵素として機能します。

 葉酸は、ビタミンB12とともに赤血球の生産を助けるビタミンです。また、代謝に関与しており、DNAやRNAなどの核酸やたんぱく質の生合成を促進し、細胞の生産や再生を助けることから、体の発育にも重要なビタミンです。葉酸は細胞の分裂や成熟を大きく左右するため、特に胎児にとっては重要な栄養成分であるといえます。妊婦が葉酸を十分に摂取することで、胎児の先天異常である神経管閉鎖障害のリスクを減らすことができます。

 最近の研究により、ビタミンB12と葉酸が、動脈硬化の危険因子と考えられているホモシステインを、メチオニンに変換する反応を助けることが示唆されました。さらに、メチオニンは血中のコレステロール値を低下させる可能性があると考えられています。これらの研究の結果から、ビタミンB12や葉酸の摂取が、虚血性心疾患の予防に効果があるのではないかと期待されており、さらなる研究が進められているところです。

ビタミンB9が不足してしまうと

欠乏すると、ビタミンB12欠乏と同様に巨赤芽球性貧血を引き起こします。また、動脈硬化の引き金になる血清中のホモシステイン含量も高くなります。胎児の正常な生育にも不可欠なため、母体の葉酸が不足すると、胎児の神経管閉鎖障害や無脳症を引き起こします。

 通常の食事では不足することはありませんが、成長期の子どもの場合は、成長のために葉酸が大量に消費されるので、葉酸不足による巨赤芽球性貧血(悪性貧血)が起こりやすくなると考えられます。

ビタミンB12

ビタミンB12はコバルトを含む化合物で、アデノシルコバラミン、メチルコバラミン、ヒドロキシコバラミン、シアノコバラミンがあります。水やアルコールに溶けやすく、光によって分解されやすい性質です。

ビタミンB12の働き

食品中のビタミンB12はたんぱく質と結合しており、胃の中でたんぱく質が変性・分解されると、遊離のビタミンB12になります。ビタミンB12は補酵素としてたんぱく質や核酸の生合成、アミノ酸や脂肪酸の代謝に関与しています。また、赤血球の成熟に関与し、葉酸とともに骨髄で正常な赤血球をつくります。

ビタミンB12が不足してしまうと

ビタミンB12は腸内細菌によっても合成されるので、一般に欠乏することはないと考えられます。しかし、ビタミンB12は胃から分泌される内因子と結合して小腸から吸収されるため、胃全摘手術をした人では、内因子が不足しビタミンB12が吸収されず欠乏する恐れがあります。

 ビタミンB12が不足すると造血作用がうまく働かず、巨赤芽球性貧血になります。また、脊髄や脳の白質障害、末梢神経障害が起こり、しびれや知覚異常の症状として現れます。

3 ビタミンC

ビタミンCは、水溶性ビタミンの一つで、16世紀から18世紀にかけての大航海時代に、新鮮な野菜や果物の摂取量が極端に少なかった船員たちの間で流行した、壊血病を予防する成分として、オレンジ果汁から発見されました。

 多くの哺乳動物では、体内でブドウ糖からビタミンCを合成することができますが、人の他、モルモットなどの一部の動物は、合成に必要な酵素がなくビタミンCを合成できないため、食事からビタミンCを摂取しなければなりません。ビタミンCの化学名は、アスコルビン酸で、生体内では通常還元型のL-アスコルビン酸または酸化型のL-デヒドロアスコルビン酸の形で存在しています。

ビタミンCの働き

ビタミンCはアスコルビン酸ともいわれ、骨や腱などの結合タンパク質であるコラーゲンの生成に必須の化合物です。ビタミンCが不足すると、コラーゲンが合成されないために、血管がもろくなり出血を起こします。これが壊血病です。壊血病のそのほかの症状としては、いらいらする、顔色が悪い、貧血、筋肉減少、心臓障害、呼吸困難などがあります。また、毛細血管・歯・軟骨などを正常に保つ働きがあるほか、皮膚のメラニン色素の生成を抑え、日焼けを防ぐ作用や、ストレスやかぜなどの病気に対する抵抗力を強める働きがあります。

 最近はビタミンCの抗酸化作用が注目され、がんや動脈硬化の予防や老化防止にビタミンCが有効であることが期待されています。

ビタミンCが不足してしまうと

ビタミンCが不足すると壊血病、皮下出血、骨形成不全、貧血になるおそれがあります。

 ビタミンCは水溶性ビタミンであり、余剰分は尿と一緒に排出されるため過剰症はないとされてきました。しかし、近年、ビタミンCの過剰摂取により、虚血状態により組織や細胞中の酸素濃度が低下した場合には、活性酸素を産生し、細胞死を引き起こす可能性が示唆されています。まだはっきりした結論は出ていませんが、サプリメントなどを利用する際は注意しましょう。

4 ビタミンD

ビタミンDにはD2からD7の6種類ありますが、D4~D7は食品にはほとんど含まれておらず、活性も低いため、一般的には高い生理活性を示すビタミンD2(エルゴカルシフェロール)とビタミンD3(コレカルシフェロール)の2つに大別されます。

 また、ビタミンD3は、ヒトの皮膚に存在するプロビタミンD3(7-デヒドロコレステロール、プロカルシフェロール)が、紫外線に当たることによって生成した、プレビタミンD3(プレカルシフェロール)からも生成されます。

 ビタミンD2もしいたけに含まれるプロビタミンD2(エルゴステロール)からも生成されます。

ビタミンDの働き

ヒトを含む哺乳動物では、ビタミンD2とビタミンD3はほぼ同等の生理的な効力をもっています。ビタミンDは肝臓と腎臓を経て活性型ビタミンDに変わり、主に体内の機能性たんぱく質の働きを活性化させることで、さまざまな作用を及ぼします。ビタミンDの生理作用の主なものに、正常な骨格と歯の発育促進が挙げられます。また、小腸でのカルシウムとリンの腸管吸収を促進させ、血中カルシウム濃度を一定に調節することで、神経伝達や筋肉の収縮などを正常に行う働きがあります。

ビタミンDが不足してしまうと

ビタミンDが欠乏すると、腸管からのカルシウム吸収の低下と腎臓でのカルシウム再吸収が低下し、カルシウムが不足して低カルシウム血症となります。そのため、骨の軟化がおこり、成人、特に妊婦や授乳婦では骨軟化症になります。また、小児の場合は骨の成長障害が起こり、姿勢が悪くなったり、足の骨が曲がったり、くる病になったりします。骨量が低下している高齢者の場合は、骨粗鬆症になりやすくなり、骨折による寝たきりのリスクが高くなります。

5 ビタミンE

ビタミンEは4種のトコフェロールと4種のトコトリエノールの合計8種類の化合物の総称です。ビタミンEには強い抗酸化性作用があり、生体膜の機能を正常に保つことや、赤血球の溶血の防止、生殖を正常に保つことに関与しています。

 トコフェロールは天然ではα(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)の4種類がありますが、体内で最も多く、また生理作用が最も強いのはα-トコフェロールです。α-トコフェロールの生理作用を100とした場合、β-トコフェロールの生理作用は40、γ-トコフェロールは10、δ-トコフェロールは1とされています。

ビタミンEの働き

脂溶性ビタミンであるビタミンEは、脂質とともに腸管からリンパ管を経由して体内に吸収されます。抗酸化作用が非常に強く、生体膜を構成する不飽和脂肪酸や他の脂溶性成分を酸化障害から守るために、細胞膜のリン脂質二重層内に存在しています。過酸化脂質の生成を抑制し、血管を健康に保つほか、血中のLDLコレステロールの酸化を抑制したり、赤血球の破壊を防いだりする作用もあることが知られています。また、細胞の酸化を防ぐため、老化防止にも効果があります。

ビタミンEが不足してしまうと

ビタミンEが不足すると、神経や筋障害の症状がみられることがあります。そのため、血行も悪くなり、冷え性や頭痛、肩こりなどを起こしやすくなります。また、抗酸化力が低下するため、肌を紫外線などの刺激から守りにくくなり、シミやシワができやすくなります。また、血液中のコレステロールも酸化しやすくなるため、これが血管壁に入り込んで溜まり動脈硬化の原因につながります。

6 ビタミンK

ビタミンKには多種類ありますが、天然のものはビタミンK1(フィロキノン)とビタミンK2(メナキノン類)の2種類のみです。ビタミンK1は植物の葉緑体で生産され、ビタミンK2は微生物から生産されます。

 ビタミンK1は1種類ですが、ビタミンK2には何種類かの同族体が存在します。ビタミンK2のうち代表的なものは、動物性食品に含まれるメナキノン-4と納豆が産生するメナキノン-7です。一般にビタミンKというときには、フィロキノン、メナキノン-4、メナキノン-7を総称したものをいいます。

ビタミンKの働き

数種類あるビタミンKのうち、栄養学的に重要なものが、ビタミンK2のメナキノン類です。ビタミンK1のフィロキノンは組織内で酵素の働きによりメナキノン-4に変換されますが、その量はそれほど多くはないと見積もられています。

 ビタミンKの主要な作用は、血液凝固に関与するものです。血液が凝固するのには、プロトロンビンなどの血液凝固因子が必要ですが、プロトロンビンが肝臓で生成されるときに、補酵素として働くのがビタミンKです。そのためビタミンKが欠乏すると血液中のプロトロンビンが減少し、血液凝固に時間がかかり、出血が止まりにくくなります。

 また、ビタミンKは丈夫な骨づくりにも不可欠で、骨に存在するオステオカルシンというたんぱく質を活性化し、カルシウムを骨に沈着させて骨の形成を促す作用があります。そのため、骨粗鬆症の治療薬としてメナキノン-4が処方されています。そのほかに、動脈の石灰化を抑制する作用もあります。

ビタミンKが不足してしまうと

ビタミンKはさまざまな食品中に広く含まれますし、ビタミンK2は腸内細菌によっても合成されるので、健常人では不足することは稀です。しかし、新生児では腸内細菌からのビタミンK2供給が少ないため、ビタミンK欠乏による新生児メレナ(消化管出血)や特発性乳児ビタミンK欠乏症(頭蓋内出血)を起こすことがあります。

 ビタミンKの吸収は胆汁の存在のもとに小腸上部で行われているため、加齢により膵液や胆汁の分泌量が低下すると、腸管からのビタミンKの吸収量が減少します。また、抗生物質の長期投与でメナキノン類を産生する腸内細菌が死滅してしまったり、ビタミンKを活性化させる酵素の活性が低下したりすることがあります。そのため、高齢者では、ビタミンK欠乏となる可能性があるため、注意が必要です。